主人公はロビー・ウィリアムズ、声(ナレーター、ボーカル)の主演はロビー・ウィリアムズ、監督はマイケル・グレイシー、配信元:プライムビデオ
1982年、イングランドのストーク・オン・トレント。8歳のロバート・ウィリアムズは、遊び場で負け犬の烙印を押され、警察官でありながら芸能人志望の父ピーターの影に怯えながら育つ。フランク・シナトラを崇拝する父から受け継いだ「無名であることへの恐怖」と、祖母ベティの温かな励ましが、彼の内なる葛藤を形作っていく。
舞台経験で才能の片鱗を見せながらもインポスター症候群に苛まれ、父親の裏切りと離散を経て、ロバートは「ロビー」としてボーイバンド「Take That」に加入する。華やかな成功の裏で、ゲイリー・バーロウへの劣等感、薬物、ステージ上の孤独が彼を蝕む。ソロ転向後もニコール・アップルトンとの破綻、ギャラガー兄弟への競争心、激しい依存と自己嫌悪の連鎖。頂点に立つほど深まる虚無が、鮮烈に描かれる。
見どころは終盤のクネブワース公演だ。記録的な観客の前で、内なる批評家たちが猿の姿をした群衆として襲いかかる。血みどろの想像上の乱闘、手首を掻き切る幻視、そして凍てつく湖面での祖母の記憶。一連のシークエンスは、ミュージカルとしてもビジュアルとしても圧巻である。
本作の最大の特徴は、ロビー・ウィリアムズを猿として描いた点にある。これは単なる奇抜な演出ではなく、自己を客観視し、滑稽で哀れで、時に愛おしい存在として突き放す痛烈な自己風刺だ。特殊メイク(CG)の完成度は極めて高く、表情の機微までが情感を帯びて観る者を引き込む。
ストーリー自体はミュージシャン伝記として一本道ではあるが、音楽と映像が織りなす感情の奔流は純粋に愉しい。成功の代償をここまで赤裸々に、かつエンターテインメントとして昇華させた作品は稀有だろう。
「無名である恐怖」と「有名である孤独」は、表裏一体なのだと、ロビーは猿の姿で教えてくれた。
総合評価:★★★★☆
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