主人公はマドレーヌ・ケラー、主演はライン・ルノー、監督はクリスチャン・カリオン、配信元:プライムビデオ
パリのタクシー運転手シャルルは、借金を抱え免許失効寸前の日常を送る中年男である。ある日、92歳のマドレーヌをブライ=シュル=マルヌからクールブヴォワの老人ホームへ送る依頼を受ける。メーターを早めに起動させるよう指示された彼は、到着前から時間を稼ごうとするが、車に乗り込んだマドレーヌは「老人ホームへ直行せず、私の人生で大切な場所を巡ってほしい」と静かに頼む。
ヴァンセンヌの生家、父の墓、ブルドー大通……。車窓を流れるパリの街並みとともに、彼女の記憶が鮮やかに蘇る。第二次世界大戦中のアメリカ兵マットとの短い恋、婚外子マチューの誕生、劇場でのお針子時代、そして酒と暴力に支配されたレイモンドとの結婚生活。耐え難い虐待の果てに彼女が取った報復は、25年の服役という重い代償を伴った。
ストーリーそのものは、老婦人を老人ホームへ運ぶ一日の道中を軸とした、ごく単純なものである。しかし、カリオン監督はこれを単なる「感動のロードムービー」に留めない。マドレーヌが語る過去は、個人の波乱を超えて、20世紀フランスの女性が背負った戦争、性愛、家庭内暴力、社会の抑圧を静かに映し出す。ライン・ルノーの演技は、93歳近い実年齢を感じさせぬ品と強靭さを併せ持ち、鏡越しに彼女を見つめるシャルルの表情に、徐々に心の氷が解けゆく過程を自然に伝える。
見どころは、ラスト25分過ぎからであろう。二人は彼女の希望通りレストランでディナーを共にし、ようやく老人ホームに到着する。シャルルは運賃を受け取らず、「また来る」と約束する。だが、次に訪れた時、彼女はすでにこの世を去っていた——。その余韻は、甘くはない。むしろ、人生の終わりを静かに受け入れる老婦人の強さと、偶然の出会いがもたらしたわずかな救いが、淡く、しかし確かに残る。
この作品は、派手な演出を避け、会話と車窓の風景だけで人間の機微を描き切る。単純な枠組みの中に、深い人生の機微を閉じ込めた、控えめで丁寧な一作である。プライムビデオで静かに味わうにふさわしい。
評価:★★★★☆(4/5)
このサイトはアフィリエイト広告を掲載しています。
amazonプライムを無料で試してみる ConoHa AI Canvas
楽天市場
マイキッチン
【駐車違反警告ステッカー】の購入|オリジナル印刷・販促のWTP企画
FREE STYLE
医療美容特化ロロント

コメント