主人公はアラミンタ・ロス(ミンティ)/ハリエット・タブマン、主演は シンシア・エリヴォ、監督はケイシー・レモンズ、配信元:プライムビデオ
1849年、メリーランドの奴隷州。ブロデス農園に縛られたアラミンタ・ロス、通称ミンティは、夫との別離の生活を余儀なくされていた。幼少時の頭部打撲による幻視を、神の啓示として受け止めた彼女は、単身、自由を求めて脱出を決意する。北極星を頼りに闇夜の道を進み、追手の影を振り切り、フィラデルフィアへと至る。そこでハリエット・タブマンと名を変え、己の使命を自覚する。
本作は、単なる逃亡譚に留まらぬ。信仰と不屈の意志によって自らを解放し、後に多くの同胞を導いた稀有な女性の足跡を、抑制の利いたタッチで描き出している。特に終盤、危険を顧みず再び南へ戻る場面の緊張と静かな昂揚は、見事というほかはない。
シンシア・エリヴォの演技は、深く心に残る。静かな眼差しに宿る決意の強さと、内に秘めた脆さのバランスが、人物に豊かな生命を与えている。レモンズ監督は、英雄譚の陥穽を避け、一人の人間の内面を丁寧に、かつ誠実に映し取った。
何よりも印象深いのは、自由とは外部から与えられるものではなく、自らの魂で掴み取るものであるという、凛とした主題である。南北戦争において北軍を率い、奴隷解放に身を捧げた彼女の生涯は、誠に稀有な輝きを放つ。
天寿を全うしたハリエット・タブマン。この作品は、歴史の闇に一筋の光を投じ、静かに、しかし確かに観る者の胸を打つ良作である。
(評価:★★★★☆)
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