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題名:64-ロクヨン-前編・後編 公開:2016年 上映時間:前編121分・後編119分 ジャンル:ドラマ 製作国:日本  

主人公は刑事の三上 義信、主演は佐藤浩市、監督は瀬々敬久、配信元:プライムビデオ

昭和64年という僅かな期間に起きた幼い少女の誘拐殺人事件を軸に、警察組織の内実と人間の業を静かに、しかし鋭く描き出した作品である。主演の佐藤浩市が演じる三上義信は、事件当時捜査に加わった刑事であり、のちに警務部広報官へと転じる。時効が迫るなか、彼は過去の隠蔽と組織の軋轢に直面しつつ、事件の真相へと近づいてゆく。

物語は、犯人に翻弄された初動捜査の失敗から始まる。遺族の慟哭と、平成という新時代の喧騒との対比が、事件の重みを際立たせる。三上が広報官として記者との信頼関係を築こうとする過程では、警察とマスコミの微妙な力関係が克明に描写される。実名原則を貫こうとする彼の姿勢は、組織の論理と個人の良心の間で揺れる人間の姿を浮かび上がらせる。

とりわけ印象深いのは、時効間近に発生した模倣事件をめぐる緊張である。報道協定の破綻、指揮車内での激しい葛藤、そして証拠なきまま釈放される容疑者——これらは単なるサスペンスの枠を超え、正義が如何に脆く、また如何に執拗に求められるかを問いかける。後編の佳境で、三上が目崎を事件現場へと誘い、静かに追及する場面は圧巻である。娘の声が呼び覚ます記憶と自白の連鎖は、復讐の連鎖を超えて、深い哀しみを湛えている。

佐藤浩市の演技は抑制が効いており、広報官として言葉を選びながらも内面に秘めた激情が滲み出る。脇を固める実力派俳優たちのアンサンブルも安定しており、組織の人間模様に厚みを与えている。監督の演出は冗長さを排し、時間の経過と記憶の層を丁寧に積み重ねる。ラストのどんど焼きの場面は、燃え上がる炎のなかに、未解決のまま残された思いと、それでも生きてゆく人々の姿を象徴的に映し出して余韻を残す。

組織の論理と個人の倫理、復讐と贖罪、過去と現在が交錯するこの物語は、単なる事件解決劇ではない。警察という巨大な装置のなかで生きる人々の苦闘を通じて、私たちは「解決」とは何かを改めて考えさせられる。簡潔にして重厚、静かなる緊張感に満ちた秀作である。

評価:★★★★☆

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