主人公はネイサン・スタッフォード、主演はアダム・G・サイモン、監督はケンロン・クラーク、配信元:プライムビデオ
近未来、記憶をダウンロードし、売買する「メムス」というバイオテック装置が蔓延する世界を舞台に、記憶のディーラーを務める男ネイサン・スタッフォードの運命を描く、ケンロン・クラーク監督のSF作品である。主演のアダム・G・サイモンが、混乱と幻影に苛まれる主人公を、ひたすら内面から押し出すように演じている。
筋立て自体は、記憶の売買をめぐる犯罪と、男が自らを見失っていく過程を追う、ごく単純なものだ。しかし伏線が過剰に積み重ねられ、物語の流れが散漫になり、まとまりを欠く印象は否めない。テンポの早い場面転換と、時折挿入される銃撃戦などのアクションは、それなりの緊張感を与えてはいるものの、作品全体を支える力にはなり得ていない。
それでも、後半、特にラスト25分あたりから、主人公が頭痛に耐えながら記憶を徐々に取り戻していく過程には、ある種の切迫感が生まれる。自己の輪郭を失った男が、交換された記憶の真相に向き合う瞬間は、この映画がわずかに示す人間的な深みと言えよう。記憶という、人の存在そのものを支えるものを商品化し、交換する世界の設定は、現代の技術社会へのささやかな警告を含んでいるようにも感じられる。
全体として、アイデアの新鮮さは認めつつも、表現の未熟さと構成の粗さが目立つ、惜しい作品である。簡潔にまとまった完成度を望みたくなるが、こうした低予算の試みに、かえって時代の空気を嗅ぎ取ることもできよう。
評価:★★☆☆☆(2)
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