主人公は孤児の少年アンドレアス・エッガー、主演はイヴァン・グスタフィク、シュテファン・ゴルスキー、アウグスト・ツィルナー、監督は、配信元:プライムビデオ
1900年頃のオーストリア・アルプスを舞台に、孤児の少年アンドレアス・エッガーの生涯が静かに紡がれる。遠い親戚の農場で虐待に耐え、唯一の心の支えであった老婆アーンルを失った彼は、青年期(シュテファン・ゴルスキー)に農場を去り、日雇い労働者として生きる。酒場で出会ったマリー(ユリア・フランツ・リヒター)と恋に落ち、山の斜面に小さな家を借り、慎ましい幸福を手にする。ロープウェイ建設の作業員として働き、村に電気が灯る時代を見届けながらも、雪崩という突然の悲劇がすべてを奪う。
ラスト25分以降が特に心に残る。孤独な老年期(アウグスト・ツィルナー)を迎えたエッガーは、岩場の下の部屋で亡き妻への手紙を書き続け、静かな日々を重ねていく。少年期のイヴァン・グスタフィクを含め、三人の俳優が年齢ごとに演じ分ける姿に、人生の移ろいが実感として迫る。
監督ハンス・シュタインビッヒラーは、派手な演出を排し、雄大なアルプスの自然を背景に、ただひたすらに生きる一人の男の姿を丁寧に切り取る。ストーリーは極めて単純でありながら、オーストリアの山岳地帯に生きた「ある一生」を通じて、観る者に自らの人生を静かに問いかける。
辛辣な苦難を描きつつ、決して暗くならないのは、エッガーの前を向く姿勢と、儚くも尊い幸福の瞬間にある。マリーを失った記憶が蘇るシーンでは胸が詰まり、涙が込み上げそうになった。しかし彼には、たとえ小さくとも「家」があり、積み重ねた日々があった。それが、観る者に不思議な安堵と感慨を与える。
激動の時代をただ生き抜いた男の、飾らぬ人生。自分の一生を振り返るような、穏やかで深い余韻が残る佳作である。(評価:★★★★☆ 4.5/5)
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