主人公はメーガン・ケリーとグレッチェン・カールソン、主演はシャリーズ・セロンとニコール・キッドマン、監督はジェイ・コーチ、配信元:プライムビデオ
フォックスニュースを舞台に、2016年頃にアメリカ社会を震撼させた実在の出来事を描いた作品である。メーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)とグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)を中心に、強大な権力を握る会長ロジャー・エイルズによる組織的なセクシャルハラスメントと、それに抗う女性たちの葛藤と決意が丁寧に紡がれる。
当初、説明的な語りがやや目立ち、ドキュメンタリー的な印象を受けた。しかし物語が進行するにつれ、個々の人物の内面が鮮やかに浮かび上がり、見る者の興味は深まっていく。トランプからの公然たる攻撃を受けながらもネットワーク内の力学に翻弄されるケリーの苦悩、異動と解雇の憂き目に遭いながらも毅然と訴訟に踏み切るカールソンの姿勢、そして後輩アンカー・ケイラ・ポスピシルの葛藤――それぞれがリアルに息づいている。
特にラスト25分からの展開は圧巻である。録音テープを巡る駆け引き、巨大メディア企業の論理、そしてエイルズの失脚に至る過程が、緊迫感を持って描かれる。派手な演出に頼ることなく、役者たちの確かな演技力で勝負する姿勢が潔く、伝記ドラマとして極めて水準が高い。
本作は単なる告発劇ではなく、保身と良心の間で揺れる人間の姿を静かに、しかし力強く映し出している。ミートゥー運動の先駆けとなった実話を、娯楽性と社会性をバランスよく融合させた点も見事だ。アメリカ社会の一断面を冷静に切り取りながら、普遍的なテーマを浮かび上がらせる良質な一篇と言えよう。演技の深みとラストの締めくくりを高く評価したい。
評価:★★★★☆(5点満点)
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