主人公はマーティ・マウザー、主演はティモシー・シャラメ、監督はジョシュ・サフディ、配信元:プライムビデオ
1952年のニューヨーク。靴屋の販売員でありながら、卓球の頂点を夢見るマーティ・マウザー(ティモシー・シャラメ)。アメリカ代表として全英オープン制覇を狙い、オレンジ色の自社ボール「マーティ・スプリーム」を売り込み、既婚の幼馴染との危うい関係を続けながら、野心と欲望のままに突き進む。監督ジョシュ・サフディが描くのは、才能と傲慢さが表裏一体となった男の痛快かつ哀しい物語である。物語はテンポよく展開し、観る者を決して退屈させない。マーティの自己中心的な高慢さは時に滑稽で、時に苛立たしく、しかしどこか愛おしい。ロンドンでのリッツ不法滞在、裕福な夫人との逢瀬、東京での屈辱と逆転。笑いと緊張が交互に訪れ、スポーツ映画の枠を超えた人間喜劇として成立している。
ティモシー・シャラメは、軽薄さと繊細さを絶妙に併せ持ち、役を完全に自分のものにしている。見どころはやはりクライマックスの日本でのエキシビションマッチだ。観客を沸かせる試合運びと、そこで露わになるマーティの本性。ヤラセの屈辱を跳ね返す一瞬のプライドが胸を打つ。そしてラスト、レイチェルが産んだばかりの赤ん坊との対面は、予想外に静かで、温かく、観る者の胸に染みる。
自己欺瞞と野心、愛と裏切りを軽快に、しかし決して軽薄に流さず描いたバランスが秀逸だ。卓球というニッチな題材をここまでエンターテインメントに昇華させた手腕に脱帽する。痛快でありながら、どこか切ない。2025年のアメリカ映画らしい、軽やかさと深みを兼ね備えた一作である。
評価(5点満点)
- 娯楽性:★★★★☆ 、演技:★★★★★ 、脚本・演出:★★★★☆ 、感動の余韻:★★★★☆ 、総合:★★★★☆
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