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題名:ザ・ランナー 公開:2026年 上映時間:84分 ジャンル:ドラマ 製作国:イギリス 

主人公はマイア・マーテン、主演はガル・ガドット、監督はケビン・マクドナルド、配信元:プライムビデオ

ロンドンの朝、検察官である母親が息子を学校へ送り、いつものように走り出す。その瞬間から、物語は容赦なく彼女を追いつめる。正体不明の声が電話口から命じる——「走れ。息子の命を救いたければ」。糖尿病の息子を人質に取られた彼女は、たった一時間のうちに、街を縦横に駆け抜けねばならない。

ケビン・マクドナルド監督は、この単純極まる設定を、驚くほど鮮やかに映像化してみせた。アンソニー・ドッド・マントルのカメラは、ガル・ガドットの走る姿をほとんど離れず、ロンドンの街並みを息つく暇もなく流し続ける。地下鉄のホーム、地下トンネル、教会の暗がり、高層ホテルの長い廊下——場所が変わるたびに緊張が一段ずつ高まり、観客の掌にじわりと汗がにじむ。伏線は丁寧に散りばめられ、後半二十分の急転は、まさに呼吸を忘れるほどの緊迫感に満ちている。

ガル・ガドットの演技は、ここでは言葉よりも身体で語られる。彼女のランニングは、ただの運動ではない。母としての必死な祈りが、一歩一歩に宿っている。息を切らし、傷つき、それでも止まらない姿は、ワンダーウーマンの華やかさとは別の、生々しい人間の強さを感じさせる。電話の向こうで嘲る声(デイミアン・ルイス)との心理戦も、彼女の表情の微かな変化で十分に伝わってくる。

ストーリー自体は、確かに単純である。しかし、その単純さを武器に、映画は観る者を一気に巻き込む。安っぽい娯楽映画には、安っぽい娯楽映画なりの、歯ごたえのある面白さがある——そう思わせてくれる作品だ。母性という古くて新しいテーマを、現代の都市空間とリアルタイムの疾走感で描き切った点に、この映画の価値はあるだろう。

評価:★★★★☆(五段階中四)

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