主人公はMI6を引退した諜報員のエリザベス・ベスト、主演はヘレン・ミレン、監督はクリス・コロンバス、配信元:ネットフリックス
舞台はイギリスの高級老人ホーム「クーパーズ・チェイス」。MI6を引退した聡明な女性エリザベス・ベストを中心に、元労働組合指導者、精神科医、そして新入りの元看護師ジョイスらによる「木曜殺人クラブ」が、毎週未解決事件を論じる。今回彼らが挑むのは、半世紀前に起きた女性殺人事件の再捜査である。
そこへ、ホームの再開発をめぐる対立から、所有者の一人が自宅で殺害される事件が発生。穏やかな日常と背後に潜む欲望、過去の影が静かに交錯する。物語は、老人たちの機知と経験を活かした捜査を通じて、意外な真実へと導かれる。
見どころは、何と言ってもキャストの妙である。ヘレン・ミレンをはじめ、イギリスの名優たちが揃い、老いというものを決して哀しく描かず、むしろ知性とユーモアの武器に変えている。特にエリザベスの、MI6時代を思わせる冷静沈着さと、老境ならではのしたたかさは痛快だ。コメディのテンポも心地よく、重くなりすぎず、軽くなりすぎず、絶妙なバランスを保っている。
後半、特にラスト30分からの展開は鮮やかである。伏線が丁寧に回収され、単なるミステリではなく、人間の業や老後の生の機微をも浮かび上がらせる。犯罪コメディの枠組みの中で、静かに人生の哀歓をにじませる脚本の味わいは上質だ。
ただ、プロット自体は「殺人クラブもの」の王道を行くため、驚きを求める人にはやや予測可能な部分もある。しかし、それを補って余りあるのは、キャラクターたちの魅力と、イギリスらしいウィットに富んだ会話の数々である。
全体として、Netflix作品ながら丁寧に作られた上品なエンターテインメントに仕上がっている。特にシニア世代の活躍を描いた作品として、爽やかで心温まる一作だ。老いることを恐れず、むしろその経験を活かして人生を楽しむ―そんなメッセージが、軽やかなコメディの中に優しく溶け込んでいる。気軽に、しかし心に残る作品である。
評価(5段階)
総合:★★★★☆、脚本・構成:★★★★☆、演技:★★★★★、娯楽性:★★★★☆、余韻:★★★★☆
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