主人公はロジャー、主演はスタンリー・トゥッチ、監督はトーマス・ヴィンセント、配信元:プライムビデオ
ある伝説の泥棒キャベンディッシュが、ルーヴルの至宝「モナ・リザ」を狙う。彼は見知らぬ二人の若者――イタリア人のサイバー犯罪の専門家キアラと、フランス人の爆発物の専門家ジェイを仲間に引き入れ、自らが二人の父親であることを明かす。急に家族となった彼らが、互いに殺し合うことなく協力して世紀の大強盗を成し遂げねばならない。これが本作の骨子である。
物語の骨格は至って単純明快である。モナ・リザを盗もうとする男たちの、いわば古典的な窃盗劇にすぎない。しかし監督ヴィンセントは、この単純さを敢えて隠そうとせず、むしろ潔く正面から押し進めている。決行七日前のパリ到着から、キアラによるセキュリティの分析、ジェイによる地下通路からの潜入準備、そして当日の停電と絵のすり替えに至るまで、場面転換は極めて速やかで、観客に息つく暇を与えない。冗長さを排したこのテンポ感は、スリラーとしての緊張を保つ上で有効に働いている。
スタンリー・トゥッチ演じるキャベンディッシュは、冷徹さとどこか人間臭い哀愁を併せ持ち、父親としての複雑な感情を抑制された表情の中に巧みに滲ませている。二人の若者との関係が、単なる利害の一致から徐々に血縁の絆へと変質していく過程も、過度な感傷に堕することなく描かれており、好感が持てる。
見どころはやはりラスト25分以降にある。富豪ヴァン・クラムへの引き渡しを巡る場面に、フランス警察とイタリア軍が突入する展開は、予想を裏切りながらも一種の諧謔を含んでおり、観客の口元を思わず緩ませる。重いクライム劇でありながら、最後に軽い笑いを差し挟むこの手際は、監督のバランス感覚の表れと言えよう。
全体として、物語の深度や人物造形の厚みに物足りなさを感じる向きもあろう。だが、テンポの良さと適度な洒落気に支えられた娯楽作品として、十分に楽しめる仕上がりである。家庭で気軽に観るのに適した、軽やかな犯罪スリラーとして推奨したい。
評価:★★★☆☆(五段階中三)
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