主人公はチョ・ジュヒョン、主演はイ・ヒョヌ、監督はキム・ソングク、配信元:プライムビデオ
主演のイ・ヒョヌが演じるチョ・ジュヒョンは、釜山郊外の老朽化した集合住宅「ウォンジョンヴィラ」203号室で、病弱な母と姪を支えながら銀行警備員として働く青年だ。不動産資格の取得を目指し、隣人たちとも穏やかに暮らしていた彼が、一つ上の階に住むシネとの些細な確執をきっかけに、怪しい「キチョン聖霊教会」のチラシを彼女の郵便受けに投じる。それがすべての始まりとなる。
当初は警戒していた住民たちも、ムンス牧師の巧みな言葉に次第に心を開いていく。仕事の不安、孤独、再開発への期待——それぞれが抱える小さな欲望や弱さに付け込まれ、団地は静かに、しかし確実に教団の色に染まっていく。ジュヒョンの母さえもその影響を受け、離れていた父までもが教団と関わっていた事実が明らかになる。薬局のユジンが実はカルト被害の調査に携わる人物であったことも加わり、ジュヒョンは孤立の度を深めていく。職場や再開発に関わる人間にまで信者が潜んでいる現実は、社会の網目がいかに脆いかを突きつける。
物語の展開は簡潔で、シーンの移り変わりも速い。主人公が徐々に追い詰められていく過程には、観る者の不安を誘う力がある。だが、全体の構造は直線的で、カルトに染まる人々の心理描写にもう一歩の深みがあれば、より鋭い社会批評となったかもしれない。
見どころは終盤にある。シネが息子の犠牲を知り、信仰が崩れ落ちる瞬間から、彼女の激しい錯乱、そして放火による炎上へと至る流れは、映画に劇的な緊張を与える。ジュヒョンが姪を救い、母ともども生き延びる結末は、穏やかな日常への回帰を示す。再開発が承認されるという皮肉も、静かに余韻を残す。
ハッピーエンドがややあっけなく感じられる点はあるものの、隣人同士の関係がいかに容易に歪みうるかを、淡々と描き出した点にこの作品の価値がある。日常の隙間に忍び寄る脅威を、丁寧に見つめた一作と言えよう。
評価:★★★☆☆(3/5)
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