主人公はサミュエル、主演はドゥニ・メノーシェ、監督はギョーム・レヌソン、配信元:プライムビデオ
交通事故で妻を失い、幼い娘との関係もぎくしゃくしたサミュエルは、妻との思い出の山小屋を整理するため一人アルプスへ向かう。そこで出会ったのは、イタリアからフランスへ逃れてきた不法滞在者の女性チェーレ。追手である地元自警団から彼女を守り、雪深い山を越える決意をする。
物語は極めてシンプルだ。追われる者と守る者の逃避行。派手なアクションを排し、雪と岩と静寂の中で二人の距離がゆっくり縮まっていく過程を丁寧に描く。緩やかな前半から、ラスト25分にかけて一気に緊張が爆発する構成は見事。村に辿り着いた直後の銃声と格闘は、息をのむ迫力がある。太めの体躯のサミュエルが、まるで地に根を張ったような強靭さで戦う姿は、予想外の爽快感すら与えてくれる。
テーマは「喪失と再生」。亡き妻の面影を重ねつつ、生きる意味をもう一度掴もうとする男の姿が、静かに胸を打つ。チェーレを演じた女性の透明感ある佇まいも、雪景色に溶け込みながら光る。
ただ、ストーリーの骨子自体は素朴で、心理描写も深掘りしきれていない部分はある。もう一歩、キャラクターの内面に踏み込んで欲しかったとの惜しみは残る。
それでも、アルプスの壮大な自然と人間の生々しいドラマが交錯するラストの密度は高く、十分に満足できる一作だ。山岳映画の新鮮味と、静から動への転換の巧みさを味わいたい人に特におすすめしたい。
評価(5点満点)
物語:★★★☆☆、演出・緊張感:★★★★☆、演技:★★★★☆、総合:★★★★☆
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