主人公はルーン・アーレッジ、主演は ピーター・サースガード、監督はティム・フェールバウム、配信元:プライムビデオ
1972年ミュンヘン夏季オリンピック。華やかな競技中継に沸くスタッフたち。マーク・スピッツの金メダル獲得に際しても、アーレッジは勝利の感動を最大化するため、ホロコーストやナチスの記憶を織り交ぜたインタビューを画策する。そこへ突然、夜の闇に銃声が響く。パレスチナ過激派「ブラック・セプテンバー」によるイスラエル選手団襲撃。人質9名を巡る緊迫の事態が、オリンピック村で進行し始めた。
報道責任者のジェフリー・メイソンらクルーは、即座に中継体制を切り替え、限られた情報の中で事件の核心に迫ろうとする。通訳マリアンヌの助力で警察無線を傍受し、身分証明書まで偽造して村内へ潜入する決断力。現場の混乱、スクープへの執着、そして人命の重みとの板挟み。スタッフたちの間で交わされるやり取りが、胸に迫る。
とりわけラスト25分からの空港移送シーン以降は、息を詰めて観入ってしまう。誤情報、混乱する報道陣、失敗に終わった救出作戦。そしてジム・マッケイによる生放送での訂正。ニュースが持つ力と危うさを、これほど生々しく描いた作品は近年稀有だろう。
1972年9月5日、史上初めてテロが全世界に生中継され、9億人がその惨劇を目撃した。あの事件から半世紀を経て、なぜ今この物語を映画化するのか。娯楽を越えた、記録と記憶、そして報道倫理への静かな問いかけとして、強く胸に残る一作となった。
評価:★★★★☆(5点満点)
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