主人公はK / ジョー、主演は ライアン・ゴズリング、監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ、配信元:プライムビデオ
1982年の名作『ブレードランナー』から35年を経て現れた続編である。環境が荒廃した2049年のロサンゼルス。ネクサス9型レプリカントのKは、同胞を「解任」するブレードランナーとして日々を過ごす。人間に蔑まれ、唯一の慰めはホログラムのジョイのみ。ある日、逃亡レプリカントを追った先で、レプリカントが子を産んだという前代未聞の事実を知る。上司の命により痕跡を消す一方、自身の記憶と交錯する謎を追い、Kは静かに、しかし深く揺らぎ始める。
ヴィルヌーヴ監督の手腕は、まずその映像空間に表れる。黄砂に覆われた荒野、雨に煙るネオンの都市、廃棄物の山――ロジャー・ディーキンスの撮影は、原作の陰鬱な美を継承しつつ、より広大で沈黙に満ちた世界を描き出す。音響と音楽の抑制された響きが、画面の重みを一層深くする。ゴズリングの表情はほとんど動かぬが、その静けさのうちに、人間と人造の境界を問う内的ドラマが透けて見える。ハリントン・フォードの再登場も、単なる懐古ではなく、時の流れと孤独を静かに映す。
物語はレプリカントの生殖という禁忌を軸に、記憶の真偽、生の意味を丁寧に紡ぐ。急激な展開を避け、Kの内面を追いながら、徐々に大きな問いへと導く構成が秀逸だ。特に終盤、約25分を過ぎての対決と再会の場面は、視覚と情感が溶け合い、息をのむ美しさがある。派手なアクションに頼らず、沈黙と視線のうちに人間性の核を探る姿勢は、原作の精神を正しく継いでいると言えよう。
やや長尺ゆえに中盤の歩みが緩やかに感じられる箇所もあるが、全体として映像・演技・主題が緊密に結びつき、SFの枠を超えた思索の映画となっている。原作を知る者には感慨深く、知らぬ者にも十分な独自の魅力を放つ。静かなる感動を湛えた、現代の傑作である。
評価:★★★★☆(五段階中四)
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