主人公は看護師のモンテ・ローザ、主演はアンジェリキ パプーリア、監督はヨルゴス・ランティモス、配信元:プライムビデオ
新体操の少女がカール・オルフの『カルミナ・ブラーナ』を背景に、厳しく反復される練習を続ける。コーチはポップスへの移行を拒み、身体を折るという威嚇さえ口にする。この冷たく硬質な序盤から、物語はすでに人間の情動を意図的に遠ざける。
「アルプス」という名の秘密結社が存在する。モンブランを頂点に、モンテ・ローザ(看護師)、マッターホルン(コーチ)、そして新体操の少女。彼らは故人の「代理」となり、遺族の求めに応じて言葉や仕草を再現する。報酬を得て悲しみを肩代わりする、奇妙に事務的な営みである。モンテ・ローザは交通事故で危篤のテニス少女に執着を抱き、回復を偽って遺族との関係を独占しようとする。禁じられた性的交渉にも手を染め、組織の規律を徐々に逸脱していく。
ランティモスの演出は相変わらず乾燥している。感情を排した台詞回し、間延びする沈黙、突然の暴力。観客は徐々にモンテ・ローザの異常な執着に気づかされ、その理不尽さに息苦しさを覚える。ラスト近く、組織から追放された彼女が父に手を伸ばし、平手打ちを受ける場面は、愛を求める行為がかえって拒絶を招く人間の孤独を、静かに、しかし残酷に示す。
物語の骨格は単純だ。しかしその単純さの中に、喪失と代替、愛着と支配という人間の根源的な欲望が、冷徹なまでに映し出されている。情感を排した手法が逆に、観る者の内面を揺さぶる。奇妙な余韻を長く残す作品である。
評価:★★★☆☆(3/5)
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