主人公は若き日のインゲ・アルテンベルク、主演はエリザベス・リーザー、監督はアリ・セリム、配信元:プライムビデオ
第一次世界大戦後のミネソタ州、ノルウェー系移民の農家を舞台に、ドイツ系の孤児インゲが、見知らぬ土地で「妻」としての居場所を求めてゆく物語である。
インゲは英語も通じず、身分証も持たぬまま到着する。しかも偶然手にした社会党の証明書が、戦後の狭い共同体に不審の影を落とす。牧師も郡の書記も結婚を拒み、婚約したオラフは彼女を友人アルヴィンの家に預けざるを得ない。生活はゆっくりと、しかし確かな重みを帯びて動き出す。インゲはブラウニー夫人と心を通わせ、やがてオラフの家に身を寄せ、公然と同棲を始める。周囲の視線は冷たい。借金に追われるアルヴィン一家の農場が競売にかけられ、オラフが衝動的に落札する場面から、物語は静かに、しかし強く、クライマックスへ向かう。
筋立ては単純である。言葉の壁、国籍の壁、偏見の壁に囲まれながら、懸命に生きる一人の女性の姿を、ほとんど劇的な転換もなく描き続ける。にもかかわらず、画面の端々に漂う切実さが、観る者の胸に静かに染み入る。監督アリ・セリムは、広大な平原と小さな農家の日常を、飾り気のない眼差しで捉え、エリザベス・リーザーのインゲは、言葉少なに、しかし確かな意志を秘めて生きる女性を、過不足なく体現している。
華やかな事件も、大げさなセリフもほとんどない。ただ、人が人として根を張ろうとする姿が、そこにある。ラスト近く、牧師たちがカンパを携えて訪れる場面の、控えめな温かさが印象深い。移民の歴史を背景にしながら、特定のイデオロギーを押しつけることなく、人間の生の機微を丁寧にすくい上げた作品と言えよう。
評価:★★★★☆(5段階中4)
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