主人公はジャンヌ、主演はスザンヌ・クライヤー、監督はマシュー・ワイルダー、配信元:プライムビデオ
物語は、アメリカ政府の建物を爆破し多数の死傷者を出した女性ジャンヌの軍事裁判を軸に展開する。彼女は「神の声を聞いて行動した」と一貫して主張し、聖女と見なす者たちとテロリストと憎む者たちとの間で世論は大きく割れる。検察側は執拗な質問を繰り返し、死刑を求めるが、ジャンヌは神の指示に従うと答え続ける。傍聴人の介入により個室での尋問に移行し、人権団体の代表との対話もかみ合わないまま、やがて判決が下される。
見どころは、終盤26分過ぎからの場面にある。検察官が罪状認否を問い、供述書への署名を迫るが、ジャンヌがすぐに応じぬため口述書を読み上げて署名させ、死刑を確定させるという緊迫した流れである。
本作の構造は、カール・テオドア・ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』やロベール・ブレッソンの『ジャンヌ・ダルク裁判』を現代アメリカに移し替えたものと言えよう。しかし、ストーリー自体は極めて単純であり、軍事裁判における原告側の口述が延々と流される構成に、特別な意図や深みを見出すことは難しい。対話の応酬が単調に繰り返されるさまは、まるで教育用の映像資料を思わせ、観客に与える効果も計り知れないものがある。信仰と権力、個人の信念と集団の正義との対立という主題は潜在的に豊かであるにもかかわらず、映像としての洗練や心理的な掘り下げが不足し、緊張感が持続しにくいのが惜しまれる。
主演の演技は真摯であり、裁判の形式美を通じて静かな緊張を保とうとする試みは看取されるが、全体として観賞の余韻は薄い。簡潔な物語を丁寧に追う姿勢は評価できるものの、やや物足りなさが残る。
評価:★★☆☆☆(5段階中2)
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