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題名:LOU/ルー 公開:2022年 上映時間:109分 ジャンル:犯罪スリラー 製作国:アメリカ 

主人公はルー、主演はアリソン・ジャニー、監督はアンナ・フォースター、配信元:ネットフリックス

一九八六年、ワシントン州のオーカス島。嵐が近づく孤島で、愛犬とともにひっそりと暮らす初老の女性ルーがいる。隣家に住む母親ハンナの幼い娘が、突如として連れ去られる。ルーは自ら命を絶とうとしていたその夜、ハンナの悲痛な訴えに応じ、荒れ狂う風雨の中を娘の行方を追う。やがて明らかになるのは、ルーがただの孤独な住人ではないという事実である。

アンナ・フォースター監督の『LOU/ルー』は、犯罪スリラーの体裁をとりながら、意外な人物の内面を静かに掘り下げる作品である。アリソン・ジャニーが演じるルーは、一見無愛想で、関節炎に悩まされる平凡な老女のように見える。しかし、彼女が示す行動の鋭さ、決断の速さ、そして過去を語るときの抑えた声には、長い年月を経て培われた冷徹さと哀しみがにじみ出ている。ジャニーの演技は、過剰な誇示を避け、あくまで抑制された強靭さを保ち、画面に独特の重みを与えている。

物語の骨格は、単純明快である。誘拐、追跡、対決という型を踏襲しつつ、途中で差し挟まれる伏線が、徐々に人物たちの運命を浮かび上がらせる。ルーの過去がCIAの現場工作員であったこと、そして彼女の息子が特殊部隊に身を投じ、やがて組織の闇に関わっていく経緯は、個人の選択がいかに逃れがたい連鎖を生むかを静かに示している。嵐の夜の捜索シーンはテンポよく進められ、雨に打たれる森や海岸の描写が、二人の女性の孤立と決意を際立たせる。

特に終盤、灯台付近での攻防は、肉体的な緊張と感情の交錯が交わる見どころである。ハンナが娘を取り戻そうとする必死さと、ルーが自らに課した責任の重さが、簡潔なやり取りの中で浮かび上がる。大どんでん返しは唐突に感じられる部分もあるが、それまでの積み重ねが、運命の不可避さを強調する効果を生んでいる。

全体として、この作品は派手なアクションに頼らず、むしろ年を重ねた女性の静かな闘争心と、家族の絆の複雑さを描き出そうとしている。脚本の展開にはやや機械的なところもあるが、ジャニーの存在感がそれを補い、視聴者に「人間の内奥」を静かに問いかける。Netflix配信という気軽な視聴環境にあっても、映画の持つ基本的な力——映像を通じて人の心の機微を伝える力——を、丁寧に保った一作と言えよう。

評価:★★★☆☆

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