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題名:ティル 公開:2023年 上映時間:130分 ジャンル:ドラマ 製作国:アメリカ   

主人公はメイミー・ティル、主演はダニエル・デッドワイラー、監督はシノニエ・チュクウ、配信元:プライムビデオ

1955年、シカゴで暮らす黒人女性メイミー・ティルは、14歳の一人息子エメット(愛称ボボ)を、ミシシッピ州の親戚のもとへ初めて一人旅立たせる。すると、雑貨店で白人女性に向かって口笛を吹いたというだけの理由で、白人集団に拉致され、凄惨なリンチの末に殺害される。息子の遺体はタラハシー川に投棄され、引き上げられた姿は母親ですら見るに堪えないほど変わり果てていた。

メイミーは、息子の遺体をシカゴへ連れ戻し、開棺葬儀を敢行する。全世界にこの現実を知らしめるため、敢えて傷だらけの顔を公開したのだ。やがて白人二人が起訴されるが、裁判はミシシッピ州で行われ、陪審員は全員白人。メイミーは自ら証人として法廷に立つ。

本作の見どころは、終盤の法廷シーンである。デッドワイラーの静かな、しかし底知れぬ怒りと悲しみを湛えた演技が圧巻だ。叫びではなく、抑え込んだ声音と眼差しだけで、観る者の胸を締め付ける。

ストーリー自体はシンプルだ。息子を理不尽に殺された一人の母親が、黒人差別の根深さを世に問いかける物語。しかしそのシンプルさゆえに、事件の残酷さと母親の決意がストレートに胸に迫る。1955年の出来事でありながら、今日のアメリカ社会に依然として残る人種問題を、静かに、しかし鋭く突きつける。

日本人である私たちには、肌の色によるこの種の理不尽を完全に理解することは難しいだろう。それでも、母として、ただ一人で立ち上がらざるを得なかったメイミーの強さと尊厳は、普遍的な感動を呼ぶ。静かな怒りと、静かな決意を描いた、忘れがたい一作である。

評価(5点満点)

脚本:★★★★☆、演出:★★★★☆、主演女優の演技:★★★★★、全体の完成度:★★★★☆、総合:★★★★☆

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