主人公はむエロディ、主演はミリー・ボビー・ブラウン、監督はファン・カルロス・フレスナディージョ
伝統的なおとぎ話の枠組みを逆手に取った、現代的なファンタジー・アドヴェンチャーである。
貧しい北の領地の娘エロディ(ミリー・ボビー・ブラウン)は、裕福なアウレア王国の王子との縁談を受け入れる。華やかな結婚式の裏に隠されたのは、古の契約――王国を救うための生贄として、ドラゴンの巣窟へ投げ込まれる運命だった。血の儀式で「王族の血」を偽装され、ヘンリー王子に抱えられて穴に落とされる瞬間から、物語は一転して生存競争へと移行する。
洞窟の暗闇で目覚めたエロディは、炎を吐くドラゴン(声:ショーレ・アグダシュルー)の執拗な追跡に晒される。だが彼女は、ただ怯えるだけの姫ではない。先人たちの残したメッセージ、傷を癒す光る虫、即席の松明となるドレスの切れ端、そして自らの知恵と身体能力を駆使して迷路のような地下を進む。脱出の兆しが見えたところで、妹フロリアが身代わりとして選ばれたことを知り、再び洞窟へ戻る決断を下す。
ラスト25分からの展開は、静かな緊張から一気に解放される。ドラゴンとの対峙は、力任せではなく、契約の盲点を突く知的な戦いとして描かれる。エロディは運命に抗い、ついにはドラゴンを従える立場に立つ。家族との再会、王国の欺瞞の清算、そして新たな旅立ち――すべてが、彼女一人の力で切り開かれる。
ドラゴンものにありがちな「英雄の討伐」ではなく、翻弄される側が生贄の連鎖を断ち切る姿に、清々しい感動がある。ミリー・ボビー・ブラウンの凛とした演技が、物語の芯を支えている。視覚効果は部分的に粗さが見えるものの、洞窟内の閉塞感と光の演出は効果的だ。
全体として、女性の主体性を静かに、しかし力強く描いた佳作。伝統の枠を破る爽快感が心地よい。
評価:★★★★☆(4/5)
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