主人公は保安官のジョー・クロス、主演は ホアキン・フェニックス、監督はアリ・アスター、配信元:プライムビデオ
舞台は2020年5月下旬、COVID-19パンデミック下のニューメキシコ州エディントン。市長テッド・ガルシアがロックダウンとマスク着用を義務付けると、保安官ジョー・クロス(ホアキン・フェニックス)は「選択の自由」を掲げて強く反発する。精神的に不安定な妻ルイーズ、陰謀論に染まる義母と共に暮らすジョーは、市長選への出馬を表明。一方、市長側はデータセンター誘致を進め、息子はBLM運動に参加するなど、社会の分断が静かに、しかし確実に深まっていく。
序盤は地方都市の政治対立と家庭の亀裂を描く人間ドラマとして落ち着いた展開を見せる。しかし中盤以降、カルト、陰謀論、暴動、武装集団が次々と絡み合い、物語は混沌とした様相を呈する。ラスト30分からの市街地銃撃戦は緊張感に満ち、砂漠での爆破シーンも視覚的に強烈だ。
ホアキン・フェニックスの演技は相変わらず圧巻で、不安定さと強靭さを併せ持つ保安官像を体現している。アリ・アスターらしい、観る者に居心地の悪さを残す演出も随所に光る。ただ、様々な社会問題を詰め込みすぎた結果、テーマがやや散漫になり、ラストのマイケル(保安官代理)の行動などは唐突に感じられたのも事実である。
現代アメリカの分断と混乱を、寓話的かつ苛烈に映し出した野心作。すべてを飲み込みきれぬ観客も少なくないだろうが、2020年代の空気を強く刻み込んだ一作として記憶に残る。混沌の中に確かに宿る、アメリカ社会への痛烈な視線を感じさせる作品だった。
評価(5点満点)
演出・緊張感:★★★★☆ 、演技:★★★★★ 、テーマの扱い:★★★☆☆ 、全体の完成度:★★★☆☆、総合:★★★★(4/5)
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