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題名:アメリカン・ディストピア 公開:2021年 上映時間:115分 ジャンル:ドラマ 製作国:アメリカ   

主人公はザビ、主演はネイディーン・マルーフ、監督はウィリアム・サリバン、配信元:プライムビデオ

近未来のアメリカ合衆国を、白人キリスト教徒の男性を中心とする右翼民兵組織「ボランティアーズ」が掌握した世界。ムスリムやLGBTQ+、不法移民ら「望まれぬ者」は国勢調査ののち首にタトゥーを刻まれ、田舎の検問所で厳しく監視される。そんな状況下で、サラとジャレットのカップル、友人のデイビッドとザビ(ムスリムの女性)らが、カナダへの脱出を図る。サラはかねてから望まれぬ人々を密かに逃がしてきた経歴を持ち、今は森の中の厳重な国境を越えるべく、ボランティア団員ゲイブの農場に潜伏している。ゲイブを納屋に鎖で繋ぎ、カナダからの無線連絡を待つ間、物資調達の途中でサラは検問所で襲撃されていたゲイの青年アージェイを救い、農場に連れ帰る。酒の席でアージェイとデイビッドが親密になるなど、人々の秘密が少しずつ露わになり、回想を通じて「ボランティアーズ」による乗っ取りがいかに彼らの人生を歪めてきたかが描かれる。

物語の骨格は至って単純である。支配された祖国から逃れようとする人々の、緊張と等待の日々を追うにすぎない。展開は全体に緩やかで、時に退屈さえ覚えるほどだ。しかし、その間に挿入される回想の数々が、痛ましくも生々しく、登場人物たちの内面を抉り出す。監督は派手なアクションに頼らず、日常的な対話と沈黙のうちに、抑圧された社会がもたらす人間の歪みと脆さを静かに浮かび上がらせようとしている。マイケル・レイモンド・ジェームズをはじめとする出演者たちの抑制の効いた演技も、その意図を支えている。

見どころは、やはり終盤の二十数分に集約される。ザビがデイビッドにゲイブの助力が必要だと告げる場面から、サラが突然血を吐いて倒れ、デイビッドが納屋でゲイブを射殺し、自らも拳銃で命を絶つに至るまでの流れは、それまでの静かな蓄積を一気に解き放つ。希望と絶望が交錯するこの結末は、単純なストーリーを超えて、現代アメリカの分断や不寛容を映す鏡として、観る者の胸に残る。配信作品として地味ながら、丁寧に構築された人間ドラマとして、一考の価値がある作品と言えよう。

評価:★★★☆☆(5段階中3)

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