主人公は大手製薬会社のCEOのミシェル・フラー、主演はエマ・ストーン、監督はヨルゴス・ランティモス、配信元:プライムビデオ
大手製薬会社オーキソリスのCEO、ミシェル・フラー(エマ・ストーン)を、陰謀論に取り憑かれたテディ・ガッツが、自閉症のいとこドンを引き連れて誘拐する。テディの母は同社の治験で昏睡に陥った過去を持ち、彼はミシェルを「アンドロメダ人」と信じ、ミツバチの死滅や人類の無感覚化を企む異星人の一員と決めつける。地下室に監禁し、頭を剃り、抗ヒスタミンクリームを塗り、月食前の皇帝との会談を強要するという筋立ては、単純明快である。
監督ヨルゴス・ランティモスの手は、仰々しいBGMで開幕から重苦しい空気を漂わせ、観客の気分を沈ませる。時折挿入されるテディのナレーションと映像は説明調に流れやすく、幻想と現実の境界を曖昧に保つ余韻をやや損なっている。一方、エマ・ストーンが頭を剃られる場面の衝撃は鮮烈で、彼女の表情と身体の変化が、ただの被害者ではない冷静さと奇妙な威厳を同時に浮かび上がらせる。
見どころは終盤、ラスト25分以降にある。ミシェルのオフィスで電卓に数字を入力し、クローゼットを宇宙船へのテレポート装置と称してテディを導く一連のやりとりは、奇抜なSF調の笑いを誘う。しかし自爆ベストの誤爆と、彼女が下す人類滅亡の啓示的な映像は、笑いを一瞬にして凍りつかせる。ブラックコメディの皮を被りつつ、妄想が現実を侵食する危うさと、権力と被害意識のねじれた関係を、静かに突きつけてくる。
全体として物語の骨格は単純に過ぎ、説明過多の箇所が目立つものの、ランティモスらしい冷徹な視点とストーンの存在感が、奇妙な余韻を残す一作である。
評価:★★★★☆(4/5)
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