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題名:ボレロ 公開:2024年 上映時間:120分 ジャンル:伝記ドラマ 製作国:フランス   

主人公はモーリス・ラヴェル、主演はラファエル・ペルセルナズ、監督はアン・フォンテーヌ、配信元:プライムビデオ

物語は、金属加工工場の響きを「これが音楽だ」とダンサーのアイダ・ルービンシュタインに語る冒頭の印象的な場面から幕を開ける。1903年の若き日の挫折から、1920年代後半の成熟期へと時を遡り、ラヴェルの創作の道程を丹念に描き出す。イーダ・ルービンシュタインからのバレエ音楽依頼、アメリカ・ツアーでのジャズとの出会い、ミシア・セルトら芸術家たちとの交流、そして長く深いスランプ。やがて一つの主題を反復し、17分にわたって積み重ねるという、簡潔にして大胆極まりない着想が生まれる。それこそが、永く人々に愛され続ける『ボレロ』であった。

特に後半、ラスト30分以降の密度が際立つ。初演の舞台とその余韻、そして成功の後に訪れる作曲家の内なる葛藤と病の影を、監督は決して大仰に扱わず、抑制の利いた筆致で映し出す。ラヴェル自身も当初気づかなかったという官能の響きが、作品の中で静かに、しかし確かに浮かび上がる過程は、観る者の胸に深い余韻を残す。

本作の価値は、単に作曲の過程をなぞるにとどまらず、芸術家の孤独と創造の苦悩を誠実に浮き彫りにした点にある。反復と漸強のみで成り立つ一曲が、如何にして近代の象徴たり得たのか。その問いに対する答えを、画面は静かに、しかし力強く提示している。

かつてクロード・ルルーシュ監督の『愛と哀しみのボレロ』に熱をうかされていた頃を懐かしく思い返す。今、こうしてラヴェルという人物の深淵に触れられたことは、音楽を愛する者にとって誠に貴重な機会であった。過度な劇化を避け、音楽と芸術家の本質に静かに迫る、品位ある佳作である。音楽ファンに限らず、広くお薦めしたい一篇と申し上げたい。

評価:★★★★☆(4.0/5)

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