主人公はルシアス、主演はポール・メスカル、監督はジュリアン・シュナーベル、配信元:ネットフリックス
マルクス・アウレリウス帝の死から16年。双子の皇帝カラカラとゲタが支配するローマは、相変わらずの腐敗と野心に満ちていた。北アフリカ・ヌミディアで穏やかに暮らしていたハンノは、妻を殺され、祖国を踏みにじられた末に奴隷へと落とされる。復讐の炎を胸にローマへ連行された彼は、剣闘士としてコロッセオの砂塵に立つことになる。
物語は復讐譚の枠を超え、母ルキッラとの再会、失われた血縁、権力の腐敗、そして共和政への微かな希望を織り交ぜながら、重厚に展開する。特に後半25分からの怒涛の展開は圧巻だ。剣闘士たちの反乱、海戦を思わせる混戦、マクシムスの遺志を継ぐかのような装備を纏ったルシアス(ハンノ)の雄姿、そして逃走する敵との最終対決。宣言の言葉が胸に響く。
見どころは、視覚的な迫力だけではない。土埃を煙幕に用いた戦い方や、ウェルギリウス『アエネイス』の一節を朗読するシーンなど、教養と野蛮が交錯するローマの複雑さを象徴的に描いている点にある。ポール・メスカルは静かな怒りと哀しみを体現し、存在感を放つ。
ただ、序盤の展開がやや急ぎ足で、登場人物の関係性がやや説明的に流れるのは惜しまれる。全体として前作の影を意識しつつも、自らの道を模索した意欲作と言えよう。
総じて、古代ローマの栄光と残酷さを現代のスクリーンに甦らせた力作。妻を奪われ、国を滅ぼされた男の復讐と再生の物語として、十分に観る者の心を揺さぶる。荘厳なるコロッセオの咆哮は、今なお観る者を古代の熱狂へと誘う。英雄の声は、確かにここに響いていた。
評価
脚本・演出:★★★★☆、アクション・映像:★★★★★、演技・情感:★★★★☆、総合:★★★★☆(4.0/5.0)
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