主人公は刑事のドングン、主演はキム・ジョンヒョン
キム・ジョンヒョン主演のミステリー・スリラーだ。残酷な殺人事件を追う刑事の姿を通じて、過去の闇と向き合う重厚な人間ドラマが展開される。
物語は、公衆トイレでハンマーで惨殺された男性の遺体から、10年前の日付が記された謎のメモが発見される場面から始まる。捜査を担当する刑事イ・ドングン（キム・ジョンヒョン）は、相棒のキム刑事とともに被害者カン・ボンジンの周辺を洗う。被害者は兵役時代、刑務官として後輩たちを苛烈にいじめ、自殺に追い込んだ過去があった。その自殺した青年チェ・ヨンフンが、実はドングンの学生時代の友人だったことを知り、彼は衝撃を受ける。
捜査が進むにつれ、被害者の上司である製薬会社の幹部キム・サンヒョンが、いじめの黒幕の一人だった疑いが浮上する。動物用麻酔を用いた手口、繰り返される送金、燃やされた手帳――証拠は徐々に過去の罪を指し示す。一方、別の同様の手口による殺人事件が発生し、事態は連続殺人へと発展。ドングンはヨンフンの母親に会い、息子の苦しみを聞きながら、自らの記憶の断片と向き合う。学生時代、ヨンフンが同性愛の噂で苦しんでいたこと、そして自分が無意識にその噂を広めた可能性に気づくのだ。
見どころは、何と言ってもラスト25分からの急展開だ。ドングンが次の標的をキム・サンヒョンと確信し、電話をかけるが、突然切れてしまう。そこで明らかになる真犯人の正体と動機は、観る者の背筋を凍らせる。神に祈りを捧げ続けてきた一人の母親が、息子の無念を晴らすための復讐を長年計画し、実行に移していたのだ。非力に見える女性が、緻密に準備を重ね、加害者たちを一人ずつ葬っていく過程は、恐怖を超えて深い悲しみを呼び起こす。
この作品は、いじめやガホク行為、同性愛への偏見といった社会問題を容赦なく描き、加害者の罪が時を経てどのように返ってくるかを問いかける。キム・ジョンヒョンの抑えた演技が、刑事の内面的葛藤を静かに伝え、脇を固めるキル・ヘヨンらの存在感も見事だ。エンディングは観客に解釈を委ねる余韻を残し、許しと贖罪の難しさを突きつける。重いテーマゆえに観賞後胸が痛むが、それだけに心に残る一作。ミステリー好きだけでなく、人間ドラマを求める人にもおすすめしたい。
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