主人公はハロルド・グレイニー、主演はジェームズ・カーン、監督はカスラ・ファラハニ、配信元:プライムビデオ
イーサンとショーンは、学校の課題と称して、近所の世捨て人ハロルド・グレイニー(カーン)の家に侵入する。幽霊が住むと思い込ませる装置と隠しカメラを仕込み、真夜中にドアを激しく鳴らし、暖房を止め、ステレオを突然響かせる。少年たちはイーサンの部屋のモニター越しに、老人の反応を六週間にわたって観察する。グレイニーは近隣で「不気味な老人」と噂される人物で、彼を被験者に選ぶ口実は容易に立つ。
画面は、少年たちの「超常現象」の実験と、将来の刑事裁判の場面、そしてグレイニーと亡き妻の過去の記憶を、交錯させて進行する。ドアの軋みや深夜の音楽といった些細な仕掛けが、老人の心の奥に残る喪失と重なる。地下室への長い滞在、不可解な沈黙。少年たち自身も、徐々に「これはただのいたずらを超えているのではないか」と不安を覚える。
物語の骨格は単純明快である。だが、期待される展開が徐々にずれていく過程で、観客の胸に静かな不安が積み重なる。カーンの演技は、怒りや恐怖を誇張せず、ただ沈黙とわずかな仕草で老人の孤独を浮き彫りにする。少年たちの無邪気さと残酷さが、同じ空間に並び立つさまは、現代の監視社会と人間の想像力の危うさを思わせる。
ラスト二十分過ぎ、地下室に広がる妻への想い出の品々と、ひとつのベルの音が、すべてを決定づける。裁判の判決場面は、皮肉を含みつつ、観る者に静かな余韻を残す。軽い悪戯が命を奪う過程を、過剰な演出に頼らず淡々と描く手腕は、初監督作ながら誠実である。物語の単純さを超えて、人間の孤独と想像の暴走を、丁寧に見つめた佳作と評したい。
評価は五段階中、三とする。
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