映画

Apple TV+ サーヴァント ターナー家の子守  2019年11月28日 – 2023年3月17日公開 ホラー アメリカ ★★★★☆

主人公はTVレポーターで子供を失った妻のドロシーと料理人の夫ショーン、主演はローレン・アンブローズとトビー・ケベル

M・ナイト・シャマランの手による、静謐なる恐怖の連作である。

4シーズンにわたる四つの章は、フィラデルフィアの古い邸宅を舞台に、喪失の淵に立つ一家族の内幕を、息を潜めて覗き込む。赤ん坊ジェリコの突然の死。妻ドロシーの記憶喪失、夫ショーンの仮面のような微笑み。そして、謎めいたナニー、リアンの到来。人形の赤ん坊が、彼女の手によって息を吹き返す――この出発点から、物語は家族の絆を蝕む、湿った霧のように広がる。 

シーズン1の魅力は、その抑制された緊張感にある。シャマランの得意とする「日常の亀裂」だ。キッチンのカウンター越しに交わされる会話は、夫婦の愛を装いつつ、互いの嘘を鋭く突く。リアンの存在は、聖母のような慈愛と、原始の呪術を併せ持ち、観る者を戸惑わせる。彼女の料理は、ただの食事ではなく、儀式の供物。赤ん坊の泣き声が響くたび、画面は現実と幻影の狭間を彷徨う。ローレン・アンブローズとトビー・ケベルという主演二人の演技は、荘重だ。ローレン・アンブローズのドロシーは、喪失を知らぬ無垢の仮面を被り、崩壊の予感を湛える。ケベルのショーンは、ユーモアで傷を覆い隠す、哀れな道化師の如し。 

シーズン2以降、物語は深みを増す。リアンの過去が明かされ、教会の陰謀、双子の秘密、果ては闇の儀式へと、層を重ねる。だが、ここに荻昌弘が好む「簡素なる複雑さ」を見出す。シャマランは、派手なジャンプスケアを避け、心理の微細な揺らぎで恐怖を紡ぐ。家族とは何か。信仰とは何か。生と死の境界は、どこに引かれるのか――これらの問いが、邸宅の壁に染みつく。

シーズン3のクライマックス、ドロシーの覚醒は、観る者の胸に、冷たい棘を残す。

シーズン4の終幕は、開放と新たな呪縛の狭間で、静かに幕を引く。未解決の謎を残すのは、人生の不条理を思わせる。 

このドラマの真価は、現代の喪失を映す鏡にある。パンデミック下の孤独、家族の崩壊、信仰の脆さ。三十分ずつの短編連作は、まるで連作短編小説の如く、各話が独立しつつ、全体を成す。映像美は、影のグラデーションに富み、音響は囁きのように繊細。シャマランの演出は、常に「見えないもの」を信じさせる魔術だ。 

総じて、『サーヴァント』は、娯楽を超えた思索の饗宴。恐怖は外から来るのではない、内なる闇から湧くのだと、改めて思い知らされる。荻流に言えば、簡潔なる恐怖の極致。未だに心に残るこの物語を、静かな夜に勧める。家族の絆を確かめたい者に、こそ。

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