主人公はセザール・カティリナ、主演はアダム・ドライバー、監督はフランシス・フォード・コッポラ、配信元:プライムビデオ
貴族が支配する架空の都市国家「ニュー・ローマ」を舞台に、理想と現実の相克を描いたSFドラマである。主演のアダム・ドライバーが演じる建築家セザール・カティリナは、革命的な建築資材「メガロン」を発明し、ユートピア的都市共同体の建設を夢見る。対するは市長シセロ。両者の対立を軸に、権力、愛、時間、そして人間の欲望が交錯する。
物語の骨子は至って単純だ。ディストピア化した現代ローマを背景に、一人の男が壮大なビジョンを追い求める姿である。しかし、その単純さのなかに、監督が生涯をかけて問い続けてきた「文明とは何か」「創造とは何か」という哲学的な問いが、濃密に織り込まれている。セザールが密かに操る「時間を止める」能力は、単なる奇想ではなく、過去の悔恨と未来への希求を象徴するメタファーとして機能する。妻を失った罪の意識、嫉妬深い愛人、親族間の陰謀、純潔を売り物にする少女スター——いずれも、ローマ史の影を帯びながら、現代社会の病理を鮮やかに映し出す。
場面転換の速さは、ときに観客の思考を追い越してしまう。哲学的な台詞が矢継ぎ早に飛び交うため、頭が追いつかぬ瞬間も少なくない。だが、それこそがこの作品の意図なのであろう。コッポラは、観客に安易な理解を許さず、映像と観念の渦中に身を投じることを求めているのだ。
特に印象深いのは、終盤20分余りの展開である。裏切りと暴力が交錯するなかで、セザールの理想がようやく形を成す瞬間、画面には静かな希望が差し込む。ジュリアとの愛が時間を再び動かす力となるくだりは、情感豊かであり、主役級の顔ぶれが揃った豪華なキャスティングも、それぞれの役割を的確に支えている。
全体として、物語の骨格は明快ながら、表現の厚みがそれを複雑にしている。コッポラ晩年の、ほとんど遺言めいた野心作として、一顧の価値は十分にあろう。
評価:★★★☆☆(3/5)
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