主人公はジェイク・フォーリー、主演・監督はラッセル・クロウ
ラッセル・クロウが主演と監督を兼ねた意欲作。億万長者のジェイクは、幼い頃の無茶な遊びを共有した旧友たちを豪邸に招き、久しぶりのポーカー勝負を提案する。酒を酌み交わし、昔話で笑い合う夜だったが、やがて全員が発熱と吐き気に襲われる。ジェイクは静かに告げた。「お前たちには毒を盛った」と。
物語の本質は、妻の浮気相手とその裏切りを許せなかった男の、冷徹な復讐劇である。仕掛けはシンプル至極。しかしクロウは、その単純さを逆手に取り、観客を巧みに翻弄する。会話の端々に散りばめられた伏線が、後半になるほど鮮やかに結びつき、「ああ、そういうことか」と膝を打つ瞬間が幾度も訪れる。
最大の見せ場はラスト25分。計画外の武装集団が邸宅に押し入り、ジェイクと旧友たちはパニックルームへ逃げ込む。そこからの展開は、まさに怒濤。強盗たちは壁に飾られた高価な絵画を次々と剥ぎ取り、巨大なキャンバスを運び出す様は、まるで別の映画が始まったかのような異様な迫力だ。復讐劇と強盗アクションが交錯する混沌の中で、クロウの顔に浮かぶ表情がまた絶妙で、怒りと困惑と、ある種の諦念が交じり合い、観る者を最後まで引きつける。
多少、説明が長すぎると感じる場面もあるものの、94分というコンパクトな尺の中で、これほどの密度の娯楽を提供してくれるのは立派。クロウの重厚な存在感と、ときおり覗く自嘲的な笑みが、復讐者の孤独を際立たせ、単なるB級サスペンスに終わらせない。
気軽に楽しめる、良質な大人のエンターテインメント。ポーカーテーブルを囲む夜の緊張感と、予想を裏切る結末が心地よい余韻を残す一作だった。
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