主人公はダイナーのウェイトレスのアニー、主演はマーゴット・ロビー
人は、人生の折々に、ふと立ち止まって「これが、運命の賭けだ」と感じる瞬間に出くわすものだ。私の場合、この『ターミナル』――いや、邦題の『アニー・イン・ザ・ターミナル』――がまさにそれだった。
駅の構内、霧に包まれたような薄暗い空気の中で、すべてが絡みつく糸のように張り巡らされ、観る者の心を静かに締め上げる。96分、わずかそれだけの時間で、復讐の輪郭が、まるで古い時計の針のように、ゆっくりと、しかし確実に回り始めるのだ。
アメリカ、イギリス、ハンガリーの合作サスペンス。監督はヴォイト・スウィンチキ、だが、この映画の魂は、主人公アニー――マーゴット・ロビーの冷たく輝く瞳――に宿っている。余韻は、煙草の煙のように、いつまでも立ち込める。
この映画は、告解の儀式から始まる。いや、告解というより、魂の賭けだ。ウェイトレスのアニーが、客の男に囁く。「仕事を、私に任せなさい。他に手があるなら、賭けをしない?」と。2週間後、2つの死体を持って戻れ、というのだ。そこから、ターミナル――終着駅の陰鬱な迷宮――で、ゲームが幕を開ける。
部屋で髭を剃る若い男、予定外の列車を待つ中年男ビル、ダイナーのカウンターでコーヒーのお代わりを頼む煙草の煙。すべてが、散らばったピースのように、互いに寄り添い、離れ、絡みつく。
ヴィンスとアルフレッド、二人の男が紅茶を注文し、言い争いを始め、ロッカー125番の鞄を開ける。
メモ帳の走り書き、フランクリンという影の依頼主、うさぎの巣穴のような奥部屋でポールダンスの女バニー――いや、アニーだ――が現れる。小遣い稼ぎだ、と彼女は笑う。だが、その笑みの奥に、鋼のような刃が潜む。
ビルは咳き込み、アニーに「ガンか?」と聞かれ、過去の罪を吐露する。日曜に死ぬ男に、彼女は言う。「何でもやり放題よ」。だが、自己憐憫に浸るのが望みだと返すと、即座に「貴方を撃ち殺すわ」。鉛筆で自殺を勧める冷徹さ。
ヴィンスは電話でフランクリンから特別オファーを受ける。「相棒を射殺しろ。報酬は倍だ」。アルフレッドもまた、同じ罠に落ちる。ホテルの螺旋階段、カードゲームの誘い、怒りの爆発。すべてが、復讐の糸に絡め取られていく。
見どころは、言うまでもなくラストの25分。部屋にバニーが訪れ、二人の男が彼女を巡って牙を剥く。喧嘩は射殺へ、駅構内は最後の銃声へ。バニーはフランクリンに報告を始める。だが、ここで明かすのは野暮だ。
映画とは、ストーリーを事前にしゃべり散らすものではない。黒澤明の言葉を借りれば、「映画はストーリーだ」。初見の衝撃を、決して損なうまい。中々、話が見えなかった。散らばる断片、絡みつく会話、煙草の煙のように曖昧な動機。だが、ようやく輪郭を現すとき――サイコキラーのアニーが、壮大な復讐劇を織りなすのだと判明する瞬間――、すべてが腑に落ちる。納得の面白さ。マーゴット・ロビーは、ウェイトレスから踊り子へ、復讐者へ、変幻自在に姿を変えながら、決してその瞳の冷たさを失わない。
ハリウッドの華やかさとは対極の、この陰鬱なターミナルで、彼女はまぎれもなく「映画」という結晶体に昇華する。観終わったあと、駅のベンチに座りたくなるような、そんな余韻。プライム・ビデオで気軽に触れられる贅沢を、君も味わってみたまえ。きっと、賭けに応じたくなるはずだ。
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