映画

魂の建築、砕かれた夢の残響映画『ブルータリスト』(2025年公開、215分、アメリカ ★★★☆)

『ブルータリスト』は、ユダヤ人建築家ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)の波乱に満ちた人生を、冷たくも美しいコンクリートの如く描き出す。

215分という長尺は、まるで彼の設計図のように緻密で、時に圧倒的で、時に息苦しい。第2次世界大戦の傷跡とアメリカの冷淡な夢の狭間で、ラースローの魂は彫刻刀のように削られ、磨かれていく。エイドリアン・ブロディの繊細かつ激情的な演技は、観る者の心に釘を打ち込む。

砕かれた希望の設計図第1部 到着の謎(1942~1952)
ラースローは、自由の女神の遠望に希望を抱きアメリカの土を踏む。しかし、その希望はペンシルバニアの埃っぽいバス停で早くも色褪せる。いとこのアティラとその妻オードリーから、ミラーアンドサン家具社の一角に机を与えられ、彼は小さな椅子をデザインする日々。

だが、食料配給の列に並んでも空腹は満たされず、協会の礼拝で妻エルジェーベトと姪ジョーフィアの安否を祈るも、答えは霧のように掴めない。国連でイスラエル建国が承認されるニュースが流れる中、彼の心は故郷ハンガリーとアメリカの狭間で揺れる。

転機は、ハリー・ビューレンとの出会いだ。ヴァン・ビューレン家の屋敷を改装し、図書館を創る依頼。2000ドルと祝杯の甘い響きに、ラースローは情熱を注ぐ。だが、完成した図書館はヴァン・ビューレンの怒りを買い、報酬は宙に浮く。

オードリーへの誤解が彼を孤立させ、港湾労働者として汗と泥にまみれる日々へ。そこにヴァン・ビューレンが現れ、過去の設計を称賛し、報酬と共に新たな依頼を提示する――広大な庭にマーガレット・ヴァン・ビューレン記念コミュニティセンターを。ラースローの心に再び炎が灯るが、その裏で麻薬と酒が彼を蝕む。

第2部 美の核心(1953~1960)
妻エルジェーベトとの再会は、希望と絶望の交差点だ。

物語の頂点、ラスト25分。ヴァン・ビューレン邸での会食前、エルジェーベトがラースローを「強姦魔」と糾弾する場面は、まるでコンクリートが砕けるような衝撃。観客は息を呑み、彼の人生の瓦礫を見つめる。

1980年、ナポリの建築ビエンナーレでラースローの作品群――米国聖公会教会(コネチカット、1973年)など――が喝采を浴びるが、その栄光は彼の傷だらけの魂を癒せるのか?

見どころ:コンクリートの叫び、魂の彫刻この映画の心臓は、ラスト25分のエルジェーベトの告発だ。彼女の言葉は、ラースローの人生を支える柱を一瞬で崩す。エイドリアン・ブロディの目――絶望と憤怒が交錯するその瞳は、観る者の胸を締め付ける。また、ブルータリズム建築の冷たくも荘厳な美学が、物語の背景で静かに息づく。ラースローの設計図は、単なる建築ではなく、彼の内なる闘争の投影だ。

感想:建築家の孤独、芸術の重さラースロー・トートは、戦争の影に追われ、アメリカの冷たい現実に叩きのめされる。ブルータリズムの無骨な美は、彼の魂そのものだ。だが、正直に告白しよう――建築の芸術性が、私の凡庸な心には届きにくい。コンクリートの冷たさは感じるが、その奥の情熱を掴みきれなかった。それでも、ラースローの人生の重さは、胸にずっしりと残る。

この映画は、理解を超えて感じるものだ。まるで、未完の建築物のように。

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