主人公は投資会社のチン会長、主演はイ・ビョンホン
ああ、韓国映画の金権政治をえぐる一作かと思いきや、結局はハリウッドのスリラー映画の二番煎じだな。監督のチョ・ウニは、資本主義の腐敗をテーマに据えつつ、脚本がどうにも平板で、観客を本気で引き込むほどの毒気がない。
イ・ビョンホンの冷徹な投資家ぶりはさすがだが、周囲の脇役がただの駒のように動くだけじゃ、興奮が薄れるってもんよ。まあ、娯楽としては及第点、だが芸術点はご愛敬だ。
あらすじ？ ふん、そんなもんを淡々と追うのは野暮ってもんだが、せっかくだから要約してやろう。ワン・ネットワークの創立記念日、チン・ヒョンピル会長（イ・ビョンホン）がドヤ顔でスピーチをぶちかます。投資信託の配当事業を自慢げにプレゼンし、キム・ミヨン広報理事とパク・ジャングン電算室長の三人で這い上がった末、金融ネットワークの巨人に成長、6000億ウォンを調達したと胸を張る。次なる野望は貯蓄銀行の買収と金融投資会社の設立だ。
チン会長は金融監督院のハン局長と密会、賄賂を握らせて審査を甘くしてもらおうとするが、「審査は厳しいぜ」と一蹴される。ところがパク室長は知的犯罪捜査班に任意同行を食らい、事態は一気に急転直下。パクとキム理事は慌てて民間防衛訓練を発動、捜査の嵐に備える。
捜査班のキム課長が帳簿と電算室の場所を吐かせようとするが、パクは「誰も知らん」と強がるも、逮捕令状を突きつけられ観念。その夜、三人が密室で顔を合わせ、キム理事がパクを追い詰めると、チン会長は「1時間を無駄にした」と激昂し、「甘やかすな」とキムに命じ、誓いの手を握り合う。まるでヤクザの盃事だな、この連中。家路についたパクは逮捕の危機を逃れるため、張り込みをかわし郊外の隠れ家に潜むギョンナムを説得、会社の資金を外国口座へ移し、逃亡の布石を打つ。
一方、捜査班では長官が視察に訪れ、キム課長が「大物を逮捕するため帳簿を確保する」と進捗を報告、一週間の猶予を勝ち取る。TVニュースは買収審査の前向き報道で盛り上がり、ワン・ネットワークの口座登録が爆発的に伸びる。パクはギョンナムに連絡、「会長逮捕直後、資金を移動させて隠れろ。俺は執行猶予のシナリオを練る」と指示。
キム課長はパクを拘束、ペン型の隠しカメラを仕込み「帳簿を盗め」と脅す。パクは会員を集めた会合で、チン会長の「ワン・アイランド構想」説明の場に潜入するが、チン会長はハン局長逮捕の報せを受け、急遽家に戻り、パクを地下の隠し部屋へ連れ込む。「ハンを釈放しろ」と頼み込み、「裏切り者がいる」と吐露すると、パクは「俺が探す」と言い張る。
チン会長は誰かに電話、「二人をよこせ」と命じる。夜、パクはハン局長の釈放を実現させるが、キム課長に呼び出され「今度こそ帳簿を盗め」と迫られる。翌朝、TVでハン局長の自殺が報じられ、キム課長は帳簿確保を強行。パクはチン会長宅に乗り込み「令状を持ってくると」と脅すが、チンから「二股をかけるとは、どんだけ欲深い奴だ」と睨まれつつ、帳簿を持ち出し車で逃げようとする。だが男たちに拘束され、駆けつけたキム課長が取り逃がす失態を犯す。
チン会長はキム理事に「資金を移せ、資料を焼却、海外へ逃げろ」と指示、TVでその逃亡劇が大々的に報じられる。捜査本部は解体、キム課長は辞任を申し出るが上層部に説得される。パクは腹を撃たれ一命を取り留めるが、借金の取り立てに追われ、被害者懇談会で吊るし上げられ、キム課長に八つ当たり。
ちょうどその時、TVでチン会長とキム理事がベトナムで焼死体で発見されたと報じられる。キム課長はパクを家に連れ込み、「見せたいものがある」と追跡記録を披露。「死は偽装だ。三人で追うぞ」と、復讐の旅が始まる。
見どころ ラスト24分からが本番だ。チン会長がキム課長とパクを拘束し、始末を試みるが、奴らのPCがハッキングされ資金を根こそぎ奪われる。追い詰められたチン会長は仕方なく逃亡を図るが、地元警察との銃撃戦に突入。銃声と爆発が鳴り響く中、韓国映画らしいドンパチが炸裂する。だがよ、ここで監督の安易さが露呈するな。ハリウッドの『ウォール街』を思わせる陰謀劇が、唐突にアクション映画にシフトするのだから、テーマの深みが台無しだ。
感想 密緻なストーリーと場面転換は確かに巧みで、豪華俳優陣の迫真の演技が光る。イ・ビョンホンの冷血漢ぶりはゾクゾクするし、キム・ウビンの捜査官役もハマってる。だが、全体として「資本主義の闇」を描くはずが、ただの金儲けスリラーに堕ちておる。社会派を気取ってるくせに、結末がハッピーエンドめいてるのが気に食わん。もっと泥臭く、観客の胸に棘を刺せば四つ星だったろうに。三つ星半、娯楽として楽しめ。次は本物の毒を期待するぜ、チョ・ウニよ。
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