主人公は貴公子と青年マルコ、主演はキム・ソンホ、カン・テジュ
あらすじは、フィリピンの闇ボクシング場で八百長試合に身を投じる青年マルコ（カン・テジュ）は、寝たきりの母を看病しながら貧しい生活を送っている。ある日、コリアン・フィリピン児童養護施設のキム施設長に父親の行方を尋ねるが、手がかりは得られない。
バーで酒を飲みながらスポーツ賭博に金を賭けたマルコは、強盗の片棒を担ぐよう持ち掛けられるが、迷いながら返事を保留する。賭けに負けやむなく、宝石店への侵入を試みるも男たちに襲われ、逃走中にスポーツカーに轢かれてしまう。
運転手の女性に連れられて病院で治療を受け、示談金を手にし家に戻ると、カン・ウォンソクと名乗る弁護士が現れる。弁護士はマルコに、病気の父親が大富豪で、代理として迎えに来たと言い、母に介護人を付け、マルコにパスポートとビザを渡してソウルへの渡航を促す。一方、倉庫では“貴公子”（キム・ソンホ）と呼ばれる謎の男が、ヤクザたちを拘束から逃れ次々と倒していく。ボスが現れると、手下は血まみれで倒れ、ボス自身も“貴公子”に手足を撃たれ、嬲られながら死んでいく。
同じ頃、山奥のホギョン財団では、若い後継者ハン理事が、自身の不正を暴く記事を書いた記者と側近を冷酷に殺害する。
ソウルに向かう飛行機内で、マルコは“貴公子”と遭遇。彼は友達を装い、韓国での目的やアメリカ英語を使うよう助言し、別れ際に不穏な言葉を囁く。
ソウル到着後、カン弁護士らと移動中のマルコの車に“貴公子”が現れ、弁護士たちを射殺。マルコは命からがら逃げるが、“貴公子”に執拗に追い詰められる。高速道路やトンネルを抜け、雨が降り出すと“貴公子”は追跡をやめるが、翌朝、再びマルコの前に現れる。
物語のクライマックスは、ラスト25分からの怒涛の展開だ。“貴公子”はマルコの頭に銃を突きつけ、ハン理事に1千万ドルを指定口座に振り込むよう要求。振り込み後、マルコは父親の臓器移植のため連行されるが、ハン理事が“貴公子”に銃を向ける。すると“貴公子”は一瞬の隙をつき、20～30人の警護を次々と倒していく。
本作の見どころは、“貴公子”の圧倒的な強さと予測不能な行動が織りなすアクションシーンの連続だ。キム・ソンホの演じる“貴公子”は、冷酷さとユーモアを兼ね備え、時折見せるコメディタッチの言動が緊張感を和らげる。特にラスト25分からの壮絶なアクションは、息をのむ展開とスピーディーな演出で観客を引き込む。マルコ役のカン・テジュも、過酷な環境で葛藤する青年の心情を丁寧に演じ、物語に深みを加えている。
感想『貴公子』は、アクションの爽快さとコメディ要素が見事に融合した作品だ。“貴公子”のハチャメチャな魅力と、キム・ソンホの独特なカリスマが全編を牽引。アクションの迫力に加え、随所に散りばめられたユーモアが観客を飽きさせない。一方で、マルコの背景や父親との関係性はもう少し掘り下げられても良かったかもしれない。それでも、アクション映画としてのエンターテインメント性は抜群で、特にアクション愛好家にはたまらない一作だ。
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