主人公は殺し屋のスティーヴン・ルーカス、主演はサム・ワーシントン
ああ、なんという凡庸なるボディガードの肖像か。主演のサム・ワーシントンが、アバターの青い巨人の記憶を借りて、殺し屋のスティーヴン・ルーカスを演じている。
期待は高かったが、結果はただの筋肉質の影絵芝居。ハリウッドのアクション工場が、今日もまた陳腐なテンプレートを吐き出しているのだ。
あらすじなど、要するにこうだ。ニューヨークの郊外、スカースデールなる金持ちの巣窟で、謎の男が家政婦から夫婦までを次々と射殺し、ガソリンを撒いて火を放つ。まるでアメリカンドリームの末路を象徴するような惨劇だ。
一方、スイスの寄宿学校で、自由奔放に育った娘エラは、父親の死を知らぬまま、恋人のセルジオとクラブでくだらない夜を過ごす。そこに現れるのが、ルーカス。冷徹な殺し屋が、メールの一報で少女の影を追う。エラを狙う刺客を撃ち倒し、連れ去り、追っ手を車で振り切り、国境を越える逃避行。トランクに少女を押し込み、ファルージャの塹壕話で時間を潰すルーカス。
イングランドの陰謀者リチャードは、部下の裏切りを暴き、金の回収を命じる。
フランスのコテージで、ルーカスは上司から家族の安全を餌にエラ殺害を迫られるが、銃口を向けて躊躇。公衆電話で父親の死を告げ、ガソリンスタンドで狙撃を食らい、厨房に逃げ込み、車で追手を轢き飛ばす。薬切れのルーカスはエラにハンドルを握らせ、鉄道駅へ。
パリのアジトで裏切り者に囲まれ、少女の復讐心が爆発し、FBIのジーナに身を委ねる。組織の闇、家族の呪縛、金の亡者たち。すべてが、予測不能のフリをした予定調和の渦巻く。
見どころ ラスト25分を過ぎてようやく、ルーカスのアジトが賞金稼ぎの餌食となり、銃弾が飛び交う。エラの復讐未遂とジーナの介入が、ようやく息を吹き返すが、それも束の間。アクションの火花は散るが、心に残る炎は点かぬ。
感想 サム・ワーシントンに期待したのは、私の過ちだった。アバターの記憶が、こんな平板なドラマに塗りつぶされるとは。公判？ いや、逃避行のさなか、アクションは散発的で、まるでハリウッドの節約術だ。殺し屋の内面など、塹壕の犬話で誤魔化すばかり。
組織の陰謀は陳腐、金の誘惑は安っぽく、少女の成長譚は少女漫画の域を出ぬ。アメリカのアクション映画は、今日もまた、筋肉と銃声で魂の空虚を隠す。退屈しのぎに、せいぜい三つ星。誰かなら、こう吐き捨てるだろう──「こんなボディガードに守られる人生など、殺され損だ」と。
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