あらすじは、1991年、クロアチア共和国がユーゴスラビアからの独立を宣言し、セルビアとの国境の街ブコバルでクロアチア人とセルビア人の住民が暮らす中、ユーゴスラビア人民軍とセルビア人武装勢力との間で激しい戦闘が始まる。
2008年、ベオグラード。アメリカ人記者オリビア・クロッカーは、戦争犯罪で告発されたミロシュ・ジョロビッチ（通称ストゥカ）を取材するため、ブコバルを訪れる。彼女はホテルの受付を務めるヨシペ・フィリポビッチと出会い、非公式な取材を条件に、ヨシペから当時の仲間たちを紹介される。ヨシペは、1991年11月20日の戦闘を振り返り、単身で戦車数台を携帯無反動砲で破壊した英雄ミロスラブ・バノジッチの物語を語るが、彼はその後行方不明となった。
オリビアは、戦時中の病院の地下室を訪れ、1991年8月下旬から11月18日まで約2500人の負傷者が収容され、1日約80発の砲撃を受けた過酷な状況を知る。
ヨシペに案内されたオリビアは、かつての敵であり今は市民の味方だという助役ボヨと出会い、戦時中の暴力の記憶を呼び起こされる。さらに、亡魂を悼む慰霊碑や、ベレプロメット収容所での私刑の痕跡を目の当たりにする。
オリビアは教会でヨシペと再会し、200人の遺体が回収された一方、連行された260人のうち60人の行方が不明であることを知る。英雄ドゥギの話を聞きたいと願うオリビアに対し、ヨシペや他の住民たちは、敵味方が入り乱れて殺し合った当時の複雑な記憶を語り始める。
見どころは、ラスト20分以降の展開が特に印象的だ。ヨシペが過酷な状況からドゥギに救われ、仲間とともに生き延びる場面は、戦争の非情さと人間の絆を強く感じさせる。
感想は、本作は、ブコバルの戦いという歴史的悲劇を通じて、戦争の傷跡と向き合いながら共存せざるを得ない人々の苦悩を描き出す。過去の大量殺戮の記憶を抱えつつ、日常を生きる住民たちの複雑な心情は、部外者には想像しがたいほど深い。アクションやドラマの枠を超え、戦争がもたらす人間の分断と和解の難しさを静かに問いかける作品だ。
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