主人公はイエメン南部に駐在しているUAE軍のアリ、ビラル、ヒンダシ
イエメン内戦の泥沼を背景に、UAE軍の若き兵士たち——アリ、ビラル、ヒンダシの運命が、容赦ない戦場の現実と交錯する『アンブッシュ』。
2015年、フーシ派の反乱でイエメン政府が崩壊、国連軍として介入したUAE軍のモカ基地を舞台に、帰国を目前にした彼らの過酷な一日が描かれる。
監督は、戦場の緊迫感と人間の脆さを巧みに捉え、観る者の胸を締めつける。
物語は、2018年2月18日、灼熱のイエメン南部で幕を開ける。アリたちは、ウェイトトレーニングで汗を流し、仲間との軽い諍いを笑い飛ばす。だが、日常は一瞬で戦場に反転する。
緊急パトロール中、故障したイエメン軍の車両を修理しつつ進む彼らは、不穏な丘の動きに警戒を強める。
村での情報収集を経て進むと、突如、男の姿と共に猛烈な銃撃とRPGが襲いかかり、車両は中破。ビラルは左大腿部を撃たれ、アリとヒンダシは動けない車内で救援を待つ。
救援部隊も迫撃砲や銃撃に阻まれ、戦況は刻々と悪化。武装集団の煙幕とRPGが、まるで死神の息吹のように彼らを追い詰める。この映画の
見どころは、ラスト30分だ。煙幕の中、救援部隊の決死の行動が始まる。アリ、ビラル、ヒンダシの反撃と、絶望的な状況での一瞬の希望が交錯する瞬間、スクリーンは息をのむ緊張感に包まれる。
特に、アリが狙撃手に撃たれるシーンは、戦争の無常を突きつける。訓練を重ねた兵士でも、戦場の運命は予測不能。状況判断が生死を分けるこの現実を、監督は冷徹に、しかしどこか温かく描き出す。
誰かならこう締めくくるだろう——「戦争は、若者たちの汗と笑顔を一瞬で奪う。だが、その中で輝く人間の絆と勇気こそが、スクリーンに焼き付けられる。アリたちの戦いは、アッラーの名のもとに静かに祈りを捧げたくなるような、深い余韻を残す」。戦死者への敬意を込めつつ、この映画は戦争の愚かさと人間の尊さを教えてくれる。観る価値あり。
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